草むらをかき分けて歩く。耳をすませば、セミの鳴き声、バッタのはねる音、葉の裏に隠れた小さな足音。虫たちの気配が満ちている夏の野原は、子どもにとって宝の山だ。網を持ち、帽子をかぶり、リュックを背負って出かける虫取り遠足は、ただの遊びではない。命を見つめ、記録し、図鑑として残すこの体験は、自然と学びが自然に交差する豊かなフィールドワークとなる。
このプログラムでは、田舎の里山や河原、湿地帯など、地域ごとの多様な自然環境を舞台に、虫取りを中心とした観察体験が行われる。朝の涼しいうちに集合し、地元の自然ガイドや昆虫に詳しいスタッフの案内で、野外へと出発。虫網やルーペ、観察シートなど必要な道具は用意されているため、手ぶらでも安心して参加できる。
まずは歩きながら、どこにどんな虫がいるのか、どんな場所を好むのかを観察する。草むらの中、木の幹、川辺の石の下。それぞれに違う生きものがひそんでいて、ちょっとした視点の変化で見える世界ががらりと変わる。虫を捕まえることだけが目的ではなく、「どうやって見つけるか」「どうすれば逃げられないか」といった観察眼や工夫を重ねていく時間が、自然と集中力と観察力を育ててくれる。
捕まえた虫は、専用の容器に入れて観察し、名前や特徴、足の数、色、大きさなどを記録していく。その場で図鑑や資料を使って名前を調べたり、写真を撮って自作の“マイ図鑑”に貼ったりすることもできる。絵を描くことが好きな子どもには、スケッチで虫の姿を記録する時間もあり、記録のしかたは子どもの個性に応じて自由に選べる。
お昼には、お弁当や地元の食材を使った軽食を野外でいただくこともあり、虫を探す興奮から少し離れて、自然の音や風を感じる穏やかな時間をはさむ。午後は見つけた虫のまとめ作業や、図鑑の表紙づくり、発表の時間などが用意されており、単なる「虫取り」で終わらないプログラムとなっている。
親子での参加が推奨されており、子どもの“発見”に親が驚き、親の知らない知識を子が得るという、双方向の学びが自然に生まれる。子どもが夢中になって草むらをのぞきこむ姿に、親が新鮮な驚きを覚えることも少なくない。虫が苦手な大人にとっても、丁寧なサポートのもとで関心を持てる構成になっているため、無理なく自然に参加できる。
安全面にも十分配慮されており、熱中症対策や蜂・マムシ対策も万全。水分補給のタイミングや、危険な場所への立ち入り制限なども明確にされている。子どもだけでなく、大人も安心して自然に身をゆだねられるよう整備されている。
外国人旅行者にとっても、日本の虫や自然環境にふれることは非常に新鮮で、英語によるサポートや多言語資料が用意されたプログラムも多く存在する。日本独自の昆虫文化や、自然との関係性を知るきっかけとして、高い満足度を得ている。
虫取りは、単なる“田舎遊び”ではない。命と向き合い、記録し、理解することで、自然の仕組みを学ぶ第一歩となる。小さな虫一匹が、世界の見方を変えてくれる。そんな出会いが詰まった一日が、旅先で待っている。




