用の美 暮らしに息づく、つくりの思想

用の美 暮らしに息づく、つくりの思想

日本には、見た目の装飾を追い求めるのではなく、使うという行為の中に美しさを見いだす「用の美」という考え方がある。これは、ただ美しいものを鑑賞するのではなく、日々の暮らしの中で使われ続ける道具にこそ真の美が宿るという思想であり、民藝運動を通じて広く知られるようになった価値観でもある。...
道としての文化 剣道・茶道・書道に共通する心の訓練

道としての文化 剣道・茶道・書道に共通する心の訓練

日本の伝統文化には、「道」と名のつくものが多く存在している。剣道、茶道、書道、柔道、華道。これらは単なる技術の習得を超えた、生き方そのものを磨くための文化として位置づけられてきた。そこには、技を身につけることよりも、人としての心を整え、姿勢を正すという深い意味が込められている。 「道」という言葉には、目的地へ向かう通り道という意味だけでなく、精神的な修練の道筋という意味がある。何かを学び、続け、深めていく中で、その人の内面が育っていく。そうした過程を重視する姿勢が、「道」と呼ばれる文化に共通して見られる。...
“礼”という習慣 社会の中で人間関係を守るしくみ

“礼”という習慣 社会の中で人間関係を守るしくみ

日本社会において、人と人との関係を支えているものの一つが「礼」である。礼儀、礼節、礼状、礼拝。さまざまな言葉の中にこの文字が使われていることからも分かるように、「礼」は日本人の行動や言葉遣い、心のあり方に深く根ざしている。これは単なるマナーではなく、社会の中で円滑な関係を築き、維持していくためのしくみである。...
静けさの価値 能・茶道に見る内面の豊かさ

静けさの価値 能・茶道に見る内面の豊かさ

日本文化に触れるとき、多くの人がまず感じるのは、その「静けさ」である。音がないというだけではない。語りすぎず、飾りすぎず、余白を大切にする空気。そこには、外の世界よりも自分の内側に向かう時間と空間が存在している。その象徴ともいえるのが、能と茶道という二つの伝統文化である。...
日本文化に見る“共存”の思想 自然・神・人のつながり

日本文化に見る“共存”の思想 自然・神・人のつながり

日本の文化には、自然と神、そして人が分かちがたく結びついているという独特の世界観がある。それは、自然を畏れながらも敬い、神を信仰しながらも日常の中に受け入れ、人間の暮らしがそれらと共にあるという感覚である。支配や征服という考えではなく、共に在ることを前提としたやさしいつながり。それが日本の文化の根底に流れている。...