「もっとおしゃれに住みたい」
「収納が足りないから棚をつけたい」
「自分の好みに部屋を変えたい」
そんな気持ちから、賃貸住宅でもDIY(セルフリノベーション)を楽しむ人が増えている。 しかし、いざ実践しようとすると浮かぶ疑問がある。
「勝手に壁に穴を開けていいの?」
「退去時に元通りにすれば大丈夫?」
この記事では、賃貸物件でDIYを行う際に押さえるべき「法律・契約上のルール」と、「やっていいこと/ダメなこと」を、トラブルを避けるための視点で具体的に解説する。
大前提「賃貸物件は他人の所有物」
賃貸住宅は「借り物」であり、居住中の部屋も所有権は貸主(大家)にある。 そのため、**原則として“勝手な改造は禁止”**されている。
たとえ入居者がお金をかけて綺麗にしたとしても、**原状回復義務(借地借家法第21条)**により、退去時には元の状態に戻さなければならない。
この原則を踏まえつつ、どの範囲までが許容されているかを整理していく。
【OKなDIY】許可不要でできる範囲
✅ 壁に貼る・置く・吊るす“原状回復可能”なもの
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壁紙リメイクシート(剥がせるタイプ)
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マスキングテープ+両面テープで固定する装飾
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突っ張り棒・突っ張り棚
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賃貸用フック・粘着式フック(剥がせるもの)
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壁に穴を開けないピクチャーレールやディスプレイ棚
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原状回復できる範囲でのLED照明、カーテンレール交換
これらは、**「現状復帰が容易」「壁や床を傷つけない」**という条件を満たせば、基本的に許可なしで実施できる。
【NGまたは要注意なDIY】原則不可または許可が必要なもの
❌ ネジ・釘で穴を開ける(石膏ボードでもNG)
→ たとえ小さな穴でも「壁の毀損」と見なされ、修繕費用を請求される可能性がある。
❌ 床や壁を塗装・張り替える(クッションフロア含む)
→ 原状回復不能と判断されることがある。剥がすと接着剤跡が残るケースも。
❌ 造作棚・収納・造り付け家具の設置
→ 取り外しが困難な場合、残置物として処分費がかかることも。
❌ キッチンや洗面所の水回りの改造
→ 配管・排水トラブルを起こす恐れがあり、専門業者以外の施工は厳禁とされるのが一般的。
「原状回復できれば何でもOK」は誤解
よく言われる「退去時に元に戻せばOKでしょ?」という考え方は、一部正しく、一部は誤り。
たとえ元に戻せるつもりで作業しても…
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接着剤やネジ跡が残っていた
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カビや剥がれの原因を作ってしまった
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“施工の形跡”自体が残っている
といった場合、貸主が「原状回復されていない」と判断すれば、費用請求の対象になる。
賃貸でも安心してDIYを楽しむための工夫
✅「貼ってはがせる素材」を選ぶ
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賃貸用リメイクシート(低粘着)
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フローリングシート(吸着式)
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賃貸用壁紙用のり(のり跡が残らないタイプ)
✅ 壁に取り付けるなら“石膏ボード用ピン”や“賃貸用パーツ”を使う
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穴が目立たない、修復しやすい専用ピン
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ホチキス止めタイプの棚や収納も人気
✅ 家具や装飾は「置き型DIY」で対応する
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壁ではなく、家具・パーティション・天井突っ張り柱などを活用
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賃貸でも本格的な見た目を再現できる「置くだけDIY」アイテムが豊富に出回っている
事前に「許可」を取ればできるDIYもある
最近では、DIY可の物件や、事前許可を取れば改装できる“改装可能賃貸”も増えている。 以下のような例がある:
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壁紙の張り替え(色や素材を限定して許可)
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照明器具の変更(オリジナル照明へ交換可)
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室内にウッドパネルや無垢材を使うリノベ
この場合、契約書や管理会社との合意書面に「どこまでOKか」を明記する必要がある。
トラブル回避のために注意すべき3つのこと
ポイント | 内容 |
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① 契約書を確認する | 「改造禁止条項」「原状回復義務」の記載を事前に読む |
② 写真を撮っておく | DIY前・後の状態を記録。退去時の証明に使える |
③ 迷ったら管理会社に聞く | 自己判断より、確認を取った方が安心かつ正当性あり |
DIYは「自己満足」ではなく「貸主の理解」あってこそ
賃貸住宅でDIYを楽しむことは、今や特別なことではない。
しかし、あくまで他人の所有物を一時的に使わせてもらっているという前提を忘れてはいけない。
勝手な改造は、原状回復トラブル・修繕費の請求・退去時の揉め事につながるリスクを伴う。
自分の手で空間を作る楽しさを大切にしつつ、「壊さず戻せる範囲」で、合法的に楽しむ知恵が、これからの“賃貸DIYの新常識”になっていくだろう。